塗装業者からもらった、屋根や外壁の見積の中に、「ケレン」という言葉を見たことはあるでしょうか。
そして、「この作業はどんなことをするのだろう」と疑問に思ったことはありませんか?
簡単に説明すると、「ケレン」とは塗装用語の一つです。
塗装の前処理として行う、下地処理のことを指します。
この作業は、塗装の仕上がりや耐久力を高めるため、欠かせない重要な工程の一つです。
それではさっそく、「ケレン」について、実際どういうものかということから、作業内容、必要性、種類について紹介していきたいと思います。
ケレンとは
ケレンとは、外壁や屋根などの、主に鉄部分や木部に付着しているサビを除去していく作業のことです。
サビの他にも、汚れや古い塗膜を除去する役割があります。
この作業は、外壁塗装の際に行われる、下地処理という補修の工程にあたります。
ヤスリや電気工具を使い、作業します。
「この作業は本当に必要なの?」と思っている方もいらっしゃるかと思います。
しかし、高圧洗浄で落としきれなかった汚れを落とすために、重要な作業となっているのがケレンです。
というのも、外壁塗装では、まず表面の汚れを落とす作業から始まります。
業務用高圧洗浄機などの、強力な水圧で落としていくのです。
しかし、サビやこびりついた塗膜などは、高圧洗浄でも落とせない場合があります。
また、サビや古い塗膜の除去以外にも、あえて凹凸の傷をつけることで、塗料の密着度を高めるという役割もあります。
この「塗料の密着性がよくなるように、表面を傷つける作業」のことを、「目粗し」といいます。
ケレンにも種類がある
次に、ケレンの種類について紹介します。
ケレンは、塗装面の劣化状況によって、4つの種類に分けることができます。
1種ケレン
1種ケレンとは、4種類のうち最も強力な「ブラスト法」という方法を使用してケレンを行うことです。
腐食やサビが非常に激しい公共道路や、橋の梁(はり)などの補修工事や、防食目的で行われます。
なお、「ブラスト法」は、金属片などが含まれている研磨剤を強力な機械で吹き付け、表面のサビや古い塗膜を除去する方法です。
しかし、粉末状になった塗料や研磨剤が周囲に飛び散ってしまう、騒音の問題が起こったりする可能性がある面から、一般住宅街で行われることはほとんどありません。
もし、この1種ケレンを行うほどの腐食であるのならば、外壁材自体を貼り替えることをオススメします。
2種ケレン
2種ケレンとは、サビの範囲が広い場合や、状態が悪い場合に行われるものです。
使用されるのは、主にパワーブラシやディスクサンダーなどの電気工具です。
これは、サビの範囲が全体の30%を超えている場合に行われることが多く、一般住宅よりも鉄骨構造の建物に行う頻度が高くなっています。
3種ケレン
3種ケレンとは、一般住宅で使用されることの多い方法です。
部分的なサビや、剥がれがある場合に行います。
使用されるのは、ディスクサンダーなどの電動工具。また、ワイヤーブラシやスクレバーといった手工具を用いて行われる場合もあります。
行う作業は2種ケレンとほとんど同じ。違うところは、劣化しておらず、まだ密着性のある塗膜(活膜)を残す点です。
4種ケレン
4種ケレンとは、サビや塗膜の劣化があまり広がっていない場合に行う作業です。
紙ヤスリやワイヤーブラシ、研磨スポンジなどの手工具のみを使用し作業を行います。
劣化しておらず、まだ密着性のある塗膜(活膜)を残すのは、3種ケレンと同じ。しかし、塗料を密着させるための「目粗し」効果を兼ね備えているのが特徴です。
戸建て住宅で行われることが多いです。
以上のように、「ケレン」といっても、塗装を行う面の状態によって、4つの種類に分けられていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ケレンの目的
続いて、ケレンを行う最大の目的について説明していきます。
耐久性の向上
ケレンは、耐久性の向上を大きな目的にしています。
というのも、ケレンには、塗料の密着度を高める効果があるためです。
ケレンを行うと、密着度が向上し、塗膜が剥がれにくくなります。そのため、耐久性が向上するのです。
ケレンをしないと、サビや古い塗膜が残ってしまい、新しく塗装をしても、残った塗膜を挟み込む状態になってしまいます。
結果、外壁そのものに悪影響を及ぼしたり、塗料が密着しにくくなったりします。
外壁への悪影響がどういうものかというと、
・古い塗膜ごと、新しい塗膜が剥がれる
・外壁に傷や割れができてしまい、雨漏りに通じる
などが挙げられます。
なかでは、挟まれた中で古い塗膜のサビが成長してしまい、新しい塗膜を破ってサビが出る場合もあるようです。
また、表面がツルツルした外壁では、塗った塗料がすぐに剥がれやすくなります。
ケレンで表面に凹凸を作ることで、塗料の接着面が増え、新しい塗装が剥がれにくくなるのです。
以上のことから、塗装面の状態をいかに綺麗にしていくかが、高い耐久性と綺麗な仕上がりに影響を及ぼしていくことがわかります。
「ケレンを行わなくてもいい壁」がある?
ここまで、ケレンを行う必要性の説明をしてきました。
しかし、「この作業がなくてもいい壁があるんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるのでは。
ですが、基本的には、どんな壁もケレン作業は行うことになります。
例えば、
「高圧洗浄で、サビや古い塗膜、汚れは取れるので、ケレンは不要です」
とか、
「外壁にサビがないので、劣化していない活膜の状態です。そのため、ケレンは不要です」
などと言われることがあるかもしれませんが、上記はウソであることがほとんどです。
というのも、高圧洗浄のみで全ての汚れを落とすことは不可能だからです。
また、前述のとおり、塗料を密着させるための「目粗し」効果も兼ね備えているケレン作業。
もし、必要ないと説明を受けた場合、施工コストの削減や、工期の短縮を狙っている可能性があります。
十分に注意をして、説明を受けるとよいでしょう。
もし、ケレン作業をしなかったら
もしも、ケレンを怠った場合、どのようなことが起きるのか?
耐久性と仕上がりという、2つの面から説明していきたいと思います。
耐久面で起こること
耐久面では、本来の塗料が持つ耐用年数に関係なく、塗膜が剥がれ落ちる可能性が高くなります。
例えば、耐用年数が20年といわれる金額の高い塗料を使用したとします。
汚れを落とさずに塗り直したり、表面の凹凸を作らないままでの塗装は、塗料があまり接着しません。
そのため、2〜3年で劣化が起こってしまう可能性もあるのです。
また、雨風や紫外線にさらされることで、塗膜の劣化が起こります。
劣化状態が早まっていることで、塗膜が剥がれやすくなり、剥がれた箇所からサビや劣化が進行していきます。
そうすると、建物本体の劣化を促進させる原因にもなりかねるのです。
仕上がり面で起こること
仕上がりの面では、塗料の剥がれによる見た目の劣化や、汚れでの塗膜の厚みの差で出来る色ムラなどが考えられます。
塗膜が剥がれていると、なんとなく綺麗な印象ではありません。
また、塗膜の厚みの差は、本来の塗膜が薄いものですから、他の場所との厚みの差は、比較的目立ちやすくなってしまう可能性があります。
しっかりした塗装でも、色ムラがあると、全体的に見て綺麗な仕上がりとは言いがたくなります。
以上の2つから、ケレンを十分に行わない状態で、塗装や錆止めなどの処置をしても、耐久性ではあまり期待ができないことがことが分かっていただけたと思います。
そのうえ、見た目にも綺麗にいかない場合も考えられるのです。
まとめ
ケレンは、外壁塗装において
仕上がりや耐久性を高めるための、欠かせない下地処理の工程
であることが分かりました。
しかし、この作業は、塗装を行うことで、一見わからなくなってしまう作業でもあります。
そのため、手抜き工事にもなりやすい箇所です。
外壁の依頼を行う際は、見積に「ケレン」が含まれているのか、確認するようにしましょう。
※「ケレン」と同じ意味を持つ専門用語が記載されている可能性もあります。
具体的には、
- ケレン作業
- サビ落とし
- 下地処理(下地調整)
- 素地調整
- 素地ごしらえ
- 目粗し
- 研磨紙刷り
などが該当します。
これらの記載がない場合は、業者へ直接質問するのが最適です。
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